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Daniel Hulme

Satalia

PublishedDate

11 April 2023

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AIについてどう考えるべきか?

WPPの最高AI責任者であり、傘下のエンタープライズAI会社であるサタリア(Satalia)のCEO、ダニエル・ヒューム(Daniel Hulme)は、AIテクノロジーに求められる応用分野を理解することが、人工知能(AI)を考える際の最も効果的な方法だと指摘しています。

良くも悪くも、AIという言葉は、さまざまなテクノロジーと同じ意味で使われています。クラウド、データ、アルゴリズム、これらすべてをAIと絡めれば興味深いことを引き起こすことができます。これらのテクノロジーは、必ずしもAIを定義するのに役立ちませんが、AIやそのパラメーター、さらには、AIを使ってどんな良いこと(あるいは悪いこと)ができるかを理解する大枠を作るきっかけにはなるのです。

しかし、それでもなお十分にAIを定義することはできません。Sataliaでは、「目的志向型の適応行動」という定義を好んで使っています。これは、テクノロジーが特定の目的を持って意思決定を行い、その意思決定が良かったか悪かったかを理解できるようにすることで、どんどんより良い意思決定を行っていくということです。しかしはっきりさせておく必要がありますが、私たちの知っているAIは、少なくとも現時点では、本当の意味で自ら学習することはありません。ですから、このように定義したところで私たちは前進できないのです。

そこで今回は、AIテクノロジーが役立つと考えられる、あるいは役立つと考えるべき応用分野を6つのカテゴリーに分類しました。当面はこのレンズを通してAIについて考え、AIの進化を理解するための大枠を捉えます。良い目的で利用されるAIだけでなく、害をもたらす恐れがあるために介入が必要なAIについても理解することが重要です。

1. 作業の自動化

1つ目のカテゴリーは作業の自動化です。これにはロボティックプロセスオートメーション、自然言語処理、マシンビジョンなどが含まれます。こうした新たなテクノロジーにより、作業の質向上と高速化が可能になりました。特定の作業を単純なアルゴリズムに置き換え、最適化と自動化の面で大きな価値を生み出せるようになりました。雇用が脅かされるのはいつも、さまざまな作業を行う能力で人間を代替するようなテクノロジーが現れた時です。しかし、人間が行う作業と機械が行う作業の能力の間には、おそらく妥協点があるはずで、この妥協点をどこにするかが長期的に最も大きな影響をもたらすと考えられます。

2. コンテンツの生成

これは「生成AI(ジェネレーティブAI)」とも呼ばれ、画像や動画、テキスト、音楽などの自動生成を行います。創造の過程を拡大させるもので、コンテンツインテリジェンスとも呼ばれます。この種のAIは、例えばキャンペーンのエンゲージメントを向上させるなど、効果的で便利な利用法が多くあります。ただしそれでも、この種のテクノロジーがより広く利用され、高度化していく中で、安全対策を施す必要はあるでしょう。

3. 人間の代替

人間をテクノロジーで代替するのがこのカテゴリーです。チャットボットやアバターといったインターフェーステクノロジーは、人間のように見えたり、人間のように感じられたりするため、倫理上の懸念やリスクを伴います。そのため、「人間のような見た目や声を持つチャットボットなどのテクノロジーは、ユーザーとやり取りする前に、本当は人間ではないと宣言するべきなのか?」、「テクノロジーに人間の名前を付けるべきなのか?」という課題が付きまといます。

また、同類性をめぐる課題もあります。Sataliaでは、人間は自分と似たような人間を探したり好んだりしがちである、ということを常に念頭に置いています。そのため、次のような課題に対応しなければなりません。「人間は人間以外とやり取りする場合や、グループ内の誰が本当の人間かが分からない場合、一体どうするのか?」、「信頼関係はどうなるか?」、「ソーシャルバブルが生まれないか?」、「多様性が失われないか?」などです。

4. データから複雑な洞察や予測を引き出す

ここで取り上げるのは、機械学習とアドバンストアナリティクスです。つまり、データから複雑な洞察を引き出すためのデータサイエンスです。より優れた斬新な方法で世界を理解し、より良いシステムを作り上げるには、相関関係の説明も必要になります。

機械学習を活用して新しい複雑な相関関係を引き出すことに大きな注目が集まっています。この種のテクノロジーに関する話題はとどまるところを知りません。マーケティングにおいては、これまで不可能だった方法で新たなペルソナを理解することや、新たな種類の人間行動を見いだすこと、そしてそれらを有効に活用することが可能になります。AIを良い目的でのみ利用するための枠組みを構築するのであれば、おそらくこのカテゴリーから始めるのが最善でしょう。

5. 複雑で、より良い意思決定

エキスパートシステム、最適化、ディシジョンツリー、推論など、これらはすべて、より良い意思決定を行うためのAIテクノロジーの利用法です。そこには「それらによって洞察を得た人間が意思決定を行ったとしても、洞察の最大限の価値を実現することはできるのか?」、「最適化プロセスをすべて機械に任せるべきか?」、「自動化と最適化はどこから始め、どこで終わらせるべきか?」といった課題が伴います。

6. 人間の能力を拡張させる

最後のカテゴリーは、フィジカルとデジタル両方の世界で人間の能力を拡張させるテクノロジーです。ここに含まれるのは、AIテクノロジーを使って制御決定が行える外骨格や、人工頭脳です。フィジカルの世界では、パフォーマンスを強化する目的でテクノロジーを使い人間の能力を拡張します。一方、メタバースでは、デジタルツイン、すなわちアバターに、人間の代わりに意思決定を行わせます。

すべてのカテゴリーを通して

これら全6つのカテゴリーには、それぞれ異なる制約がありますし、そうあるべきだとも言えます。また、それぞれに異なるセキュリティ上、安全上、倫理上、ガバナンス上の懸念が付きまといます。そうした懸念は挙げれば切りがありません。「生成AIに偏見はないか?」、「適切なKPIに合わせて最適化したか?」、「データの組み合わせが有害だったらどうなるか?」、「入手できてはいけないはずの洞察を引き出してしまった場合はどうなるか?」。まだまだほかにもありますが、こうした懸念は、AIを安全に利用するための枠組みを構築する上での助けとなります。

ただ、実態ははるかに複雑です。これらの6つのカテゴリーは、互いに大きく絡み合っています。それぞれがシステム全体を構成するための要素なのです。しかし、こうしてカテゴリー分けすることで、テクノロジーの強み、倫理上の懸念、弱み、摩擦、チャンスなどが明らかになってきます。

数十年間ばらばらに開発されてきた結果、AIをめぐる状況は複雑化してしまいました。しかし、カテゴリー分けすれば、テクノロジーとその利用法を分解できます。分解すれば、テクノロジー、スキル、プロセスの改善の取り組みを始めることができます。それが問題をより良い方法で解決すること、そして何よりも、安全で倫理的な未来のAIのための枠組みを理解することにつながります。

 

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